6月11日は私の仕事の都合で休講にしてしまってすまなかった。
おかげで昨日締め切りの仕事がようやく完了しました。 『英語青年』という業界誌の8月号で、4月に亡くなったSaul Bellowの特集を組むので寄稿せよ、というご依頼である。 ソール・ベロー、知っているよね。 え、知らない? アメリカのノーベル賞作家なんだぜ。 Chiakiさん、Shinくんはもちろんご承知のはず。ほら、去年、授業でやったでしょ。 この4月5日にとうとう幽明境を異にしてしまった。89歳。最期まで「現役」の長寿の作家だった。 1915年6月10日生まれなので、ちょうど先週の金曜日が90歳の誕生日にあたるはずだったんです。 私はこの人の作品で卒論を書き、修論を書いた。 しかし、どうも最近この作家はあまり注目を集めなくなってきた感がある。 私も遠ざかって久しい。 実際、編集者の依頼にも、特集の趣旨としてこんなことが書かれていました。 「ユダヤ系アメリカ文学の旗手として、ソール・ベローほど戦後の日本(とりわけ50年代から80年代初頭にかけて)において翻訳や研究がなされてきた小説家も少ないのではないかと思われます。その一方で、(これは私自身の個人的感触にすぎぬかもしれませんが)最近、ベローへの関心が、海外、日本とも、若干翳りを見せているのではないかという印象をもっております。ベローの逝去にあたり、こうした現状を見据えつつ、改めてベローの小説世界、今後のベロー再評価へ向けての視点などについてご執筆ください。」 編集の方の「個人的感触」はただしい。大いにただしい。 確かに関心の翳りは著しい。 私の学生時代には、英文科では当然のように読まれていた。ペーパーバックで学生にごりごり読ませるなんてことがふつうにあったんだよ。 高校生でも「目端のきいた」奴は読んでいた(と学生時代に法学部の友人に言われた)。 去年の半期授業で、あえてBellowの長編をペーパーバックで読む、という暴挙に出たのは、時流に逆らってやろうという天の邪鬼な発想に基づくものでした。 二度とベローについて何か書くことはあるまいと思っていたし、書くべきこともないと思っていたのだけれど、依頼があったとき、学生時代に一生懸命こりこりベローを読んでいた「若く清く貧しい」自分自身に敬意を払って、あのころの自分自身に向けて書くことにしようと引き受けたんです。 亡くなったベローへの追悼とお別れを言うのと、「ベロー研究者」だった自分自身にお別れを言うのと、ふたつのお別れを言っておこう、という個人的な意味もありました。 でも、すぐに後悔した。 何年もベローのことは読むこともなく考えてもいませんでしたので(授業で取り上げたのは「真面目に読んだり考えたり」に含まれない)、キャッチ・アップするのがたいへんでした。 ちょうど他の仕事も重なって、十分に時間が割けず、いよいよ原稿を落とすか、という危地に立たされパニックになったのでした。 真剣に取り組み始めたのは、新学期開始のばたばたが過ぎた5月の連休あたりから。 時間がないので、ほとんど電車のなかで読んではノートを記すという自転車操業でした。 ちょうどJRの事故もあって「電車内書斎」がうまく機能せず、いよいよピンチに追い込まれたのであった。 しかし、つねづねみなさんに申しているように、いよいよのところで危機を救ってくれるのは自分が書いた研究ノートです。 十分な時間が取れず、思うようになりませんでしたが、それでもこの間に原稿用紙換算で100枚以上の研究ノートを作成しましたよ。 原稿をぜんぜん書いていない状態が続くと不安であるが、研究ノートがあればなんとかなる。だいじょうぶ。 そういうものである。 で、いよいよ昨日の締め切りに向けて、金、土、日、月の4日間で一気呵成に書き上げた。 ほんとは月曜日締め切りなので、日曜までに仕上げなければならないのだけれど、「締め切り時間」は示されていなかったので、昨日も終日こりこり書き続け、夜も更けてからメールで送信する。 依頼は400字詰換算で14.2枚(5680字)。 4日でこれだけ書き飛ばす、というのは私にとって「新記録」である。 だいたい私は遅筆なので、締め切りのずっと以前に原稿を書き上げ、ゆっくり書き直すのを習わしとしていたのだけれど、今回はそうもいかない。 たいへんストレスフルな4日間を短距離走で駆け抜けたのでした。 まだ編集者のオーケーが出ていないのでどうなるかわからないが(どきどき)、先行してブログにアップしてしまうのである。 今日はもうひとつ別の仕事の締め切りがあるので、これからそちらに専心せねばならないけれど、本日中にはここに挙げます。 ということで、私は自分の仕事はひとつあげた。 みなさんも研究ノート「最低2つアップ」の仕事をこなすように。 でないと今週末の「全員集合」ができなくなります。 まだの人は、えっと、Chiakiさん、Shinくん、S.T.くん、Eriさん、PRuserくんの5人か。 今週末の授業成立いかんは、きみたちの双肩にかかっている。 健闘を祈る。
by mewspap
| 2005-06-14 11:13
| Mew's Pap
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