匠雅音『核家族から単家族へ』(丸善ライブラリー、1997) を読みました。この本には社会を歴史的に、農耕社会、工業社会、情報社会という3つの分類に分けてその変化とともに変わってきた家族の形について書かれていました。それをまとめてみます。
農耕社会とは、産業革命が始まるまでの狩猟・採集、農耕・牧畜の時代をさす。この社会では、家が生産拠点であって、家と仕事場という分離はなかった。男性も女性もまた子どもも能力に差はあるが、共に生産労働に参加し、労働とは家全体におけるものであった。家事労働もまた、家全体の生産活動の1つとされ仕事として認識されていたし、子育ても男性と共に行っていた。このように、家族全員が生産組織であったため個人が個別に収入を得ることはできなかった。そのため、農家の耕作する土地の生産力の中では、家は何人でも働き手となる人間を取り込むことがでた。よって、この社会での家族形態は、祖父母や戸主の兄弟姉妹なども同じ家に同居する大家族であった。 その後、産業革命が起こり、工業社会が始まった。農耕社会では家と仕事場は同じであったが、仕事場は外へと移動していった。そして、肉体的に強い男性は外に働きに出て行った。有償の職場労働が男性のものになると、無償の家事労働と子育ては必然的に女性の担当になっていった。そのため収入は家ではなく個人へと移っていった。個人として収入を得ることができるのは男性だけであったので、女性は結婚し男性の伴侶となり一生を過ごすしか道がなくなった。このように、生産労働をするものは1人となり、住居者全員が労働力ではなくなった。そのため、農耕社会のように家が多くの人間を抱えることができなくなり、外で収入を得る男性と家庭の仕事を引き受ける収入のない女性、という核家族の形に変わっていった。しかし、この核家族の中での女性の役割は技術が発達するにつれてあやふやになっていく。当初、家事は時間がかかり重要なものであった。しかし、電化製品などの登場で家事労働にかかる時間が大幅に短縮されたため女性は家事の中に存在価値を見出せなくなっていく。そして、子どもを立派に育てることに存在理由を求めていった。 その後、コンピュータが導入されたことによって、肉体的に力があるものだけが生産労働ができるという時代ではなくなった。工業社会では女性は非力なため男性を外に送り出すことで生産労働を助けていたのだが、力に関係なく男性と同じように生産労働が行える情報社会にはいっていった。そのため、男性と女性は生きていくためには必ずしも夫婦として共に家庭を築く必要はなくなった。家事労働と生産労働を共にこなすことが可能になり、男女関係なく1人で生きてことのできる単家族が生まれた。子どもも夫婦がそろった家庭のもとで育てる必要がなくなり、親が1人で子どもを育てる単家庭も現れる。そして、この社会では生きるために一緒に同居するのではなく、一緒に生活するのが楽しいから同居するという形の家庭が生まれる。 『クレーマー、クレーマー』の時代は、情報社会だと思いました。でも、ジョアンナの仕事は、ビリーを育てることがほとんどだったので、子育てを主な仕事とする専業主婦が多い工業社会の形も残っていると思います。そして、この本でも女性が子育ての中に存在価値が見出せると思ったのは勘違いだったと書いているように、ジョアンナもそれを見出せなかったので出て行ったんだと思います。そして情報社会の中、1人でも生きていける収入を手に入れて、単家族をつくって帰ってきたんだなと思いました。その時に新しい恋人もできていますが、多分彼と結婚する時は仕事をやめて核家族にもどるんではなくて、単家族がよりそってできた家庭を築くんだろうと思いました。
by mewspap
| 2006-10-06 02:28
| 2006年度ゼミ
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