本日はオープン・キャンパスがあり、個別相談の高校生対応をする役を仰せつかったので出かける。
オープン・キャンパスで高校生諸君と直接お話をするのは2年ぶりである。 遠い自宅からの遠距離通勤に耐えかね、普段はTシャツにジーンズにスニーカーというオンボロないでたちを、「営業用」にして「勝負服」にして「戦闘着」と思い定めて通勤し授業に臨んでいるが、本日はさすがに多数の高校生のお相手をすることになるので、大人である本学学生に対するのと同じ格好もできぬかと(出勤前の約10秒ほど)思量をめぐらし、せめて上着を着ようとジャケットを持参する。 しかし、やはり慣れぬことはせぬものである 結局、暑いので羽織ることもなく、通勤のJR車内でも上着は邪魔なので棚に置いておいたら、大阪駅で下車するときにものの見事に置き忘れた。 JR御堂筋口の改札をくぐった瞬間に手ぶらであることに「あれ?」と気づく。 即座にきびすを返して改札口の案内係の駅員さんにお伝えしたら、20分あまりもあちこち走り回り、問い合わせ、探し出してもってきてくれた。すまない。 待っている間、改札を通り抜ける人々をぼうっと眺めて過ごす。 改札担当の駅員さんは二人いるけれど、ひとりは私のジャケットを探しに走り回ってくれているので、お客の対応はおひとりである。 1分間に10名以上の人が駅員さんに何か尋ね、通過していく。 曰く、○○特急は何番線から発車するのか、△△電車は何時に到着するのか、××に行くにはどの電車に乗ったらいいかそれは何番線から出るのか次は何時発なのか、新幹線経由の乗車券が自動改札を通らないがどうしたらいいか、券売機で特急指定席券は買えるのか、券売機はどこにあるのか、トイレはどこか、近くに何か食べることのできるお店はあるか・・・。 忘れ物のジャケットが到着するのを待つ20分ほどのあいだに、200名以上の人が突然到来してはきわめて多様な、そしてそれぞれに喫緊の要請を吐露して秒速の的確な返答を求め、「そして一言の感謝の言葉を残すでもなく」そそくさと去ってゆく。 ストレスフルである。私なら1時間ともたずにノイローゼになるであろう。 私のイメージのなかで、駅員さんというのは不機嫌な表情をしているのが常である。 しかしそれも致し方ないであろう。 不機嫌というより、疲れているのである、あれは。こちらとしては「ただひとつの質問」をしているだけで、それに駅員というプロフェッショナルから的確な対応を得るのを当然としていて、それが得られれば駅という「時間に追われる」場のしからしむところにより急いで次の目的地へと移動していくのであるが、そのような人間は私ひとりではない。 次から次へとそういう数多くの「私」がやって来て適切かつ瞬時の対応を求めているのである。 オープン・キャンパスはたいへんな盛況である。私は正門横の新会館でS崎先生とともに文学部のブースで個別相談に応じるが、みなさんの「後輩(予定者)たち」が続々訪れる。 全学部がブースを設けて学部別相談をやっているが、文学部は広いホールの一面を全部占拠している。壮観である。 10時始まりのはずが、前倒しですでに始まっており、2時過ぎまでノン・ストップで続く。 ちょっととぎれ目を見つけてようやく昼ご飯。凛風館に初めて入った。 お弁当をかっ込んだらすぐさまとって返して、4時終了のはずが5時前まで続く・・・。 ふう。 本日お相手した数十人の「未来の文学部生(候補)」で印象に残ったのは・・・ま、やめておこう。 高校生というのは、未だ他者を知らず、したがって我を知らない。 自分の視野がきわめて狭隘であるを知らない。 しかし愚かであるというのとは違う。 ほとんどタブラ・ラサのごとく、可能性の横溢する奇跡の時間を生きているのである。 奇跡を認識(realize)して実現(realize)するのは当人次第である。 そしてこの瞬間が奇跡であり、それを認識し実現するのが本人次第であるを知らないというのが、高校生の定義なのである。 大学生はまずそれを認識するのを本務とする。 あとは実現し得るか否かが、大学生となって卒業できるか否かを左右するのである。
by mewspap
| 2006-08-26 21:53
| Mew's Pap
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