戦後または戦争終了間際に見られる他者との出会いで、これから数週間は『ジャスティス』の出会いを見ていこうと思います。初めはハート中尉とマクナマラ大佐の出会いです。
ハート中尉とマクナマラ大佐1 第一の出会い(相手の存在を知る出会い) 初めての出会い(マクナマラの兵舎で) マクナマラが収容所に送られてきたハート中尉に質問するために呼び出す。 マクナマラ「なぜ生きている?」 ハート「ジープがひっくり返り ドイツ兵に軍靴だけ取られた」 マクナマラ「何かお守りでも?」 ハート「四つ葉のクローバーを」 マクナマラ「よかったな あわててパンをかじるな 胃が弱ってる。診療所に送られるぞ」 ハート「どうでしょう この行軍のあとは診療所も高級ホテルです」 マクナマラ「17日間で胃が縮んでる 確か17日間だったな 汽車に6日 行軍が6日 尋問が5日間か?」 ハート「いいえ 3日です」過去の回想 もどる マクナマラ「ともかくあわてて食うな」 ハート「はい そうします」 マクナマラ「尋問をした男はシューマンてやつか?」ハートの過去の回想 ハート「いいえ ルッツです」 マクナマラ「シューマンの野郎 俺を ひどい目に」 ハート「見回りです」見回りが入ってくるとき家のものを隠す ハート「愛想なしですね」 マクナマラ「その方が助かる タバコは?」ハートの過去の回想 タバコを? マクナマラ「中尉 もう1度聞く」過去の回想 もう一度聞く 燃料庫は? ハート「どうも」マクナマラの目を見る マクナマラ「ルッツは 君の司令部の作戦を知ってたか?」 ハート「すべてを」 マクナマラ「燃料庫の位置や部隊の動きも?」ハート過去の回想 地図を向けられる ハート「私が捕まった日の朝食までも」マクナマラ 視線を右にそらす 過去の回想 指差せ それで終わる ハート「私は名前と階級と認識番号だけを」 マクナマラ「分かった 行っていい 残念だが ここは満員だ 君は27兵舎へ」 ハート「下士官の兵舎ですか?」 マクナマラ「そうだ 最近はドイツ軍も大繁盛でな いい兵舎だ」ハート 少し戸惑った顔 敬礼 マクナマラ 敬礼 マクナマラ ハートの靴に気がつく 以上 ここでの初めての出会い、つまり相手の存在を知る出会いで、マクナマラはハートが「本物の兵士かどうか」を確かめるための質問をしている。これは相手がどういった存在、人間なのかを理解するための最初の手段である。しかし、ハートは質問とは異なる回答を述べたり、「私が捕まった日の朝食までも」などとありえない回答をしたりしている。このときマクナマラは視線をそらし、ハートが本物の兵士ではないと見極め、自分たちとは違う下士官の兵舎に送ることに決める。 この場面で分かることは、マクナマラがハートに対し、本物の兵士かどうかを確かめようとしていることから、マクナマラは、仕官学校卒で、自分が兵士であるということに、強い誇りを持っていると考えられる。そして、上院議員の息子で、戦時には後方の司令部にいたハートがどういった人間か、自分たちの脱走計画に加わる価値のある人物かを見ようとしているのだ。この二人の話し合いを見てみると、マクナマラは他者を理解するのに必要十分な行為をしているのに対し、自分の弱さを覆い隠そうとし、兵士のあるべき姿など分からないハートとは、当然理解し合うことなどできない。その一番の理由は「兵士」に対する価値観の違いである。 ではどうしたら二人は理解し合えるのか、ということを考えると、ハート自身が「本物の兵士」となることである。捕虜収容所内という現状から、マクナマラがハートのあいまいな価値観を理解するのは不可能だからだ。とにかく、これで2人には一本の線が引かれたわけだ。これをどうやって縮めていくか。そして、この縮めていける時間があるのが、戦後、あるいは戦争終了間際の映画の特徴でもある。戦争真っ只中では、お互いが味方どうしであっても、理解し合う前に相手が死んでしまったり、ゆっくり正常な感情で話し合うことなどもできないからだ。次週は、第2の出会いから2人がどのように理解し合っていくのかを見ていきます。
by mewspap
| 2006-07-28 19:24
| 2006年度ゼミ
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