■シネマ◆
■の■■■ ■つぶ■■ ◆ その2 ■■■やき ■ ■ ◆ 2002-08-08 ゼミのみなさんへ 一仕事終えたら、夏風邪をひいてしまった。ごほごほ。 みなさんも注意しましょう。 ◆『あの頃ペニー・レインと』ALMOST FAMOUS 2000年アメリカ 監督:キャメロン・クロウ 脚本:キャメロン・クロウ 出演:フランシス・マクドーマンド、ケイト・ハドソン、パトリック・フュジット他 【ジャンル:70年代ロック風俗青春物語】 監督・脚本のキャメロン・クロウの自伝的作品。 ケイト・ハドソン演じるペニー・レイン役は、ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」に似ている。 いい役者である。表情、笑顔がいい。 「BGMに全編50年代の……」というのは『アメリカン・グラフィティ』を初め少なからずあるように思うが、60~70年代のサウンドを視座におさめること、つまりあの時代を「歴史化」するにはずいぶん時間がかかった。 あの時代と音楽を、少し年少のロー・ティーンの視点から、しかもライターという本来critical distanceを保持する者のinvolvementという「一回転半ひねり」で描いたのが成功の要因。 当事者が当事者の視点で描いたら息苦しいしね。 サイモン&ガーファンクル、ザ・フー、パープルにツェッペリンか。ああ懐かしい。 かつて、ディストーション・ギターの音を快く感じる若いモンは、カルシウム欠乏症であると言われたが、旨い魚喰ってカルシウムたっぷりの今でもやっぱり気持ちいいで。 『キャリー』(@スティーヴン・キング)の女の子が最後に門を叩く『ローリング・ストーン』誌の編集部が出てくるし(なぜかアジア系の編集者)、最後にはサンフランシスコにある当該のオフィス・ビルの入り口のショットも。 主人公の媒介者となる伝説的ロック評論家レスター・バングスの役割がいい。もっと強調すべきだね。年長の賢者にして指導者、文化英雄的なトリックスターで、彼こそ優等生の主人公を「異世界」へとつなぐ媒介者なんだから。 キャメロン・クロウは今後その点を注意するように。 ちういちうい。 欲望とは他者の欲望の模倣であるからして、当初パトリックくんはロック・ファンの姉の欲望を欲望し、レスター・バングスの欲望を欲望し、それからペニー・レインの欲望を欲望する。 他者の欲望の模倣が破綻したとき、パトリックくんは「大人」になるんだね。よかったね、パトリックくん。今度はきみが、後継の若者たちが模倣すべき欲望となるんだよ。 ◆◆『15ミニッツ』FIFTEEN MINUTES 2001年アメリカ 監督:ジョン・ハーツフェルド 脚本:ジョン・ハーツフェルド 出演:ロバート・デ・ニーロ、エドワード・バーンズ他 【ジャンル:ポリス】 デ・ニーロが早々に殺されてしまう。狂い方・キレ方が足りなかった役柄だからか。 相棒である放火犯捜査消防士は、デイヴ・スペクターを長身にしたようなひと(エドワード・バーンズ)だが、デ・ニーロに対してちょっと格落ちなのは否めない。 二人組の犯人のロシア人はずっとヴィデオを撮っていて、自由の女神を背景にして殺される最期まで「演じ」続ける。 犯罪の映像化と報道が「ワンセット」になっているアメリカの現状(あたかもニュース報道されないと事件が「現実」とならないかのようですね)と、それを欲望する他者たるロシア人(みずからの犯罪をドキュメンタリー風に撮影しないと自分たちの存在が「現実」とならないかのよう)という構図。 映像化を通じてでなければ、「この現実」をうまく掌握することができないという、シミュレーション社会ですな。 アメリカの報道番組。 ニュース・ショーもそうだけれども、出演者が体験談を語る告白番組もアメリカらしく、過剰なまでの言葉、言葉、言葉の奔流と、括弧付きの「民主主義」への皮肉が、番組に参加している聴視者の賛否のブーイングと拍手と"Oh!"という歓声に表れています。 そしてTV業界の裏話(テレビ局のアンカーが口にする"If they don't breed, they'll sleep."という月並みな台詞)も、規格化されすぎているね。 アメリカの裁判制度。 シリアル・キラーがinsanity故に無罪となり、体験談の出版と映画化で大儲けするような裁判制度にあきれ果てることは万人共通の反応でしょうけれど、弁護士がデイヴ・スペクター似くんに"This is the system."と宣うと、スペクター似くんは「被害者の人権はどうなるんだ!」とこれまた規格化された反問をします。 テレビ関係者と弁護士は悪モンで、一見悪そうな刑事デ・ニーロくんと、放火犯捜査消防士のスペクター似くん(セントラル・パークで黒人の強盗を木に手錠で繋いじゃってそれがまた人権侵害であり人種差別であると報道されて叩かれる)は良いモンってこと。 ぱちぱち。 後味の悪いイヤな映画。 デ・ニーロはショーン・コネリーのようなキレイなじいさん役は永遠に回ってこないのだろうか。 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』や『俺達は天使じゃない』はよかったけれど、あの演技とは思えないほとんど癖になっている首を斜めにして薄ら笑ったり口をへの字に結んだりする顔は、正直ちょっと見飽きた。 デ・ニーロと同じ釜の飯を食ったアクターズ・スタジオ派のダスティン・ホフマンが、あの「むき」と口の端を持ち上げて、困ったような無理のある作り笑いを浮かべる人を完璧に演じる図像にも、同じような印象を受ける。 なんだか物語のロバート・デ・ニーロが演じる登場人物が「ロバート・デ・ニーロ」を演じたり、ダスティン・ホフマン演じる登場人物が「ダスティン・ホフマン」を演じたりしているんじゃないかという気がしてくる。 こういうのって役者冥利につきると言うのだろうか。よく分からない。 ◆◆◆『グリーンフィンガーズ』GREENFINGERS 2000年イギリス 監督:ジョエル・ハーシュマン 脚本:ジョエル・ハーシュマン 出演:知らないイギリス俳優さんたち 【ジャンル:刑務所】 知らなかったがイギリス映画である。ガーデニングのお話だからか。 やっぱりハリウッド映画と違って、「いい話」をその「まんま」描いている。 いかにもという殺人犯の巨漢もイギリス英語をしゃべると可愛らしい(ような気がする)。 黒人の殺人犯も迫力がなくっていい(ような気がする)。 主演の人は知らない人ばかり。 主人公コリンを演じるクライヴ・オーウェンという人は、目はトキオの国分くんに似ていて、雰囲気は高倉健(気のせいだろうか)。 権力者および権力者側にいるひとがみないい人ばかりなのも特徴である。 所長、看守、女王、それにトニーとできてしまうお茶運びのおねえちゃんまで。 ほんとにもう先は長くないぞというガリガリの爺さんファーガソンは知らない俳優だけど、50年代からテレビや映画のゲスト・アクターを主にやってきたそうで、いかにも脇役の名優という感じ。 イギリスの老優と言えば、当然シェイクスピア劇で鍛えられた方であろう(思い込みだろうか)。 この人の師匠・導師としての重みがもちょっとあったら面白かったのに。 コリンがスミレの花を初めて咲かせるのに成功し、そこから天才庭師"greenfingers"の才能を目覚めさせてガーデニングに没入していくところ――つまり一番肝心なところ――は、あまり説得力がないと思うんだけれど。 2002-08-08 Copyright c.2002 by Mew's Pap Co.Ltd. All rights reserved.
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| 2005-10-30 19:40
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