土曜日は1限からなので、6時半には早くも家を出て、特急に乗って車内書斎をしながら大阪に出る。
JRが復旧するまでは宝塚経由で阪急で通勤していたので、梅田は通らなかった。 ひさしぶりに、紀伊国屋の近くにある「Hitotubu」というおにぎりスタンドで、昼ご飯用にお気に入りの明太子おにぎりと鶏そぼろおにぎりを購入する。 注文してから「にぎにぎ」してくれるおいしいおにぎり屋さんである。 1限目は法学部の英語Ⅳ。 今日が授業最終日で、来週は試験である。 広告論の英文を毎回1チャプターずつやっているのだが、ちょっと通常のやり方と異なる。 まず最初と最後のパラグラフを訳読し、トピックの概略を掴んでから、第二パラグラフ以降は訳読ではなく内容の要旨を発表していく。 通常は「アトランダム指名」なのだが、授業最終回ということでボランタリー挙手制とし、複数の挙手があったら「じゃんけん」で決する「じゃんけん入札制」。 授業の終わりに、来週の試験についてアナウンス。 教科書、辞書、ノートその他すべて参照可。というか教科書は必携で、持参せねば受験できない。 和訳問題はなし。前期の授業でトレーニングしてきた、「英文の内容をすばやく把握する」スキルを査定するような試験内容である。 必ず教科書から出題。ただし「どこから」出題するかは内緒。問題用紙を開いた瞬間、受講生のみなさんは「あっ」と驚くであろう。ポイントは「教科書から出題するけどどこからかは言わない」という点にある。 したがって詰め込み一夜漬けの試験準備は不要、というか不可能、というか「試験準備を禁止する」とアナウンスする。 ははは。 みなさんがんばってね。 さて、問題作らねば。 2限は文学部の英語Ⅳ。 Paul Auster ed., I Though My Father Was God の短いエピソードをグループ単位で研究し、プレゼンテーションをおこなう授業である。こういうけっこう厚めの本である。 プレゼンはグループの個性が出てたいへん楽しい。 ホワイトボードに切り絵を貼ったり、教材提示装置で画像を見せたり、スケッチブックに絵を描いてストーリー説明をしながら次々とめくっていく「紙芝居」をやったり、自作自演のDVDを作成して動画を流したり、パワーポイントを活用したり、「ルートビア」というものが登場するお話では実物を購入してきて示したり(授業後にもらったけど変な味で、アメリカ人はけったいなものが好きなんだな)、聴き手の注意をいやが上にも引き付ける技巧をあれこれ尽くしている。 "Rainbow"という素敵な話では、「ケチャップその他で汚れたTシャツ」を少し知恵遅れの天使のような女の子が「虹みたい」と言うんだけれど、白地のTシャツにいろんな色で「汚して」それを掲げてみせる上演までしていた。 "Friday Night"というエピソードの「紙芝居」には、登場人部のキャラに擬してなぜか私も突然登場を見る。 こんなの。 (c) Daisuke Abe この授業では、先般おこなわれた受講生による授業評価アンケートでかつてない異様なほどのハイ・マークを記録する。 別に私の教育実践が高く評価されたわけではない。 ほとんど全部、学生たち自身が作り上げてきた授業である。私はお膳立てと司会のみ。したがってこの高い評価は、受講生たちの満足度と「自己評価」が高かったことを示している。 とりわけ、独自にアンケート項目に付け加えたグループ・ワークとプレゼンテーションという授業方法に関する評価は、なんと「100%」が「たいへんよい」としていた。 私は基本的にアンケートというものに懐疑的である。 それが「気分」の「趨勢」を掴むこと以上に意味があるとは思えない。 だってそうでしょ。 たとえばa, b, cの選択肢があったとする。 aが31%、bが38%、cが26%、その他が5%だとして、今後の対応はbの38%を中心に考えるなんてばかげているんじゃないか。 残りのa + c = 58%という「多数」はどうなるの。 その上、だいたい天の邪鬼の私などは「その他」の5%の見解に入ることが少なくない。 100人中99人が白と言っても、私ひとりが黒と言って、その「白」見解にはいかにしても肯んじ得ないこともあろう。 私の見解はたった1%「にすぎない」黙殺・排除すべきものであろうか。 そのような姿勢は私が浸ってきた「文学的感覚」と相容れない。 しかし、それにしても「100%」というのは驚きである。こんなのはもうほとんどアンケートの名に値しないのではないかと疑うのである。 この「100%」という数字の内実を精査する意味もあり、来週実施予定の学期末試験は、前期プレゼンの「レヴュー」を書いてもらうことにする。単なる数値ではなく、文章によって、この不可解な数値の意味するところが見えてくるかも知れない。 ということで、この授業でも「一夜漬け試験準備不要」というか「準備不可能」というか「準備禁止」とする。 ところで、この本をテキストに使うのは二年目なのだけど、たいへんおもしろいので来年以降も同じくグループ研究&プレゼン方式で継続しようと思っていた矢先、なんとこれだけは出ないであろうと思っていた翻訳が、柴田元幸先生による「読む前からもう名訳であることが自明」のものとして出版されてしまった。 ありゃりゃ。 ポール・オースター編(柴田元幸訳)『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』(新潮社) うーむ。来年以降どころか、後期の授業運営も再考を迫られるところである。 嬉し哀し、痛し痒しである。 2限目終了後は、おいしいおにぎりランチ・ブレーク、そして3限目はゼミ。 専業主婦とかバックラッシュとか衣装や眼鏡の記号論的解釈とかフランケンシュタインやらフリークスとかヴァーチャル・リアリティとかヘミングウェイ短編読了マラソン(Shinくん参照↓)とかのお話をふんふんと聞く。 ゼミのみなさん、来週は3時よりプレゼン大会&打ち上げコンパとなりますのでお忘れなく。 必ずレジュメを用意すること。 ゼミのあとは、一昨年卒業した元ゼミ生の「ヒッキー」が遊びに来てくれる。 現在は中学校の教免取得のために科目等履修生で通学中である。 在学中に高校の教免を取り、今度は中学である。 ちなみに私はどっちも所持していない。まさか教師になるとはゆめゆめ想像だにしていなかったんだもん。 大学は教免なくてもかまわないんですよね。そういうわけで「無免許運転」を続けて今日に至る。 いずれ「大事故」に見舞われるかもしれない。 ヒッキーには、近々「嬉し哀し教育実習生な日々」の日記をここのAlmuniカテゴリーで連載してもらう予定である。 高校についで中学も、都合5週間にわたって教育実習に出向いていた「実習生のプロ」の体験談であるからして、後輩のみなさんに資するところ大であろう。 馬鹿話と昔話とちょっとだけ「教育論」をやったあと、そのままヒッキーとともに大学前通りで早めの晩飯を食べる。 昔からでかい犬が店内にごろりんとしている「コッド岬」なるお店でパスタ。 わんちゃん、年取ったね。 知らなかったのだが、ここのパスタはあっと驚く大盛りである。とても寄る年波の私には食べきれない。店内にずてーっと寝転がったわんちゃんの気持ちがよくわかる。 晩は自宅にも寄らずに地域の自治会広報部の会合に直行する。 広報部が発行する会報の最新号も無事発行となったので、スタッフでちょっとだけ祝杯をあげる。 それから次号の編集をめぐって、会合は11時過ぎまで続く。朝が早かったので途中から脳内からぶすぶすと煙が立ち上る。 次号の会報では、「ラジオ体操」に精進しているお年寄りたちの活動を特集することになり、私が取材と原稿書きのご指名を受ける。 早起き取材はぜんぜん問題ないけれど、締め切りは週末である。 学期末で休みが取れない時期、ちょっと時間的にタイトになるな、こりゃ。 11時20分に帰宅。 10時にはぐーすか眠りこけている「早寝早起き」の私としては考えられないような時間帯である。 だが、疲れすぎて眠れない。ウィンブルドンで女子の対戦が始まるころまでぼんやりTV観ていて、ふと目が覚めたらソファに横臥したまま4時半になっていた。ちゅんちゅんと雀の声が響き、夜の闇を押しやってうっすらとした白が東の方から広がってきている。 もう朝なんだ。
by mewspap
| 2005-07-03 11:12
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