The Devil Wears Pradaの2人の女性――原作と映画におけるアンドレアとミランダの人物像の比較――
目次 序論 第一章 アンドレア・サックス 第一節 仕事に対する姿勢 第二節 ミランダへの態度 第三節 恋人との関係性 第二章 ミランダ・プリーストーリー 第一節 ミランダと家族 第二節 ファッション業界への誇り 第三章 エンディングの分析 第一節 原作のエンディング 第二節 映画のエンディング 結論 注 参考文献 序論 『プラダを着た悪魔』(The Devil Wears Prada, 2006)は公開と同時に若い女性を中心に大きな反響を呼んだ。本作はローレン・ワイズバーガー(Lauren Weisberger)の同名の小説(2003)を脚色したものである。脚本を担当したアライン・ブロッシュ・マッケンナ(Aline Brosh McKenna)は、ワイズバーガーの原作を尊重したと述べている。確かに、本作のストーリーは大筋で原作を尊重している。しかしながら、主要登場人物の性格描写、エンディングで起こる危機の2点については、映画と原作で大きく異なっている。本論文では、これら原作と映画の差異について考察・分析を行い、原作と映画で主要登場人物であるアンドレア・サックス(Andrea Sachs)とミランダ・プリーストーリー(Miranda Priestly)がどのような人物として描かれているかを考察する。 第一章では、本作品のヒロインであるアンドレアの性格描写と言動を考察する。周囲の人に向ける彼女の言動や思いを原作と映画で比較し、原作のアンドレアの方がより自分本位な人間であり、映画のアンドレアの方がより努力家で他人に対する理解がある人物であることを論証する。 第二章では、主人公の上司であるミランダの性格描写と言動を考察する。家族に対する彼女の言動や仕事への姿勢を原作と映画で比較し、原作のミランダの方が単なる鬼上司で主人公の敵役として描かれているのに対し、映画のミランダは弱い一面を持ちより多面的な人間として描かれていることを論証する。 第三章では、原作と映画それぞれのエンディングの構造を分析する。原作と映画のどちらにおいてもアンドレアはミランダと決別することになるが、決別に至るまでの思いには違いがある。それらの相違を分析し、2人が決別した理由を述べる。さらに、原作ではアンドレアとミランダは互いの生き方を理解できず、否定しているのに対して、映画はそれを理解し合っていることを論じる。 結論 本論文では、主要登場人物であるアンドレアとミランダに焦点を当て、2人の性格描写や言動が原作と映画でどのような差異があるか検証してきた。 アンドレアについては、原作のほうが仕事に対する姿勢が中途半端であり、また自己中心的な言動から周囲との距離が開いていった。映画版では『ランウェイ』で働くことに意義を見出し、そのために周囲との距離が開いたという違いがある。さらにミランダに対する彼女の思いは原作では終始嫌悪と敵意だったのに対し、映画は好意と尊敬であり、両者には大きな相違がある。 ミランダについては、原作では単なる鬼上司で、仕事もプライベートも充実している完璧なキャリア・ウーマンとして描かれていたが、映画ではプライベートなことで弱さを見せており、完璧なキャリア・ウーマンとは言いがたいが、人間味が窺える。さらに映画では仕事に対する誇りが明確に表現されていることから、映画版のミランダのほうが好感を持ちやすい構造をしていることがわかる。 そして原作と映画それぞれのエンディングの分析を行い、アンドレアがミランダと決別したのは正反対の理由があることを読み解いてきた。そこから、原作のアンドレアとミランダは最後まで敵対していたが、映画ではお互いを認め合っていることがわかる。さらに、映画では原作よりも明確に、アンドレアとミランダの社会人としての成熟の度合いの違いが表現されている。映画版で、アンドレアがミランダの置かれている立場や、負っている責任の重さを理解できたからこそ、2人は互いの生き方を認めあえたのである。原作のアンドレアは、ミランダの負っているものの大きさをまだ理解できていないが、おそらくこれから理解していくものと考えられる。すなわち映画版のほうが、より明確にアンドレアの社会人としての成長を表現しているといえる。 注 (1)Lauren Weisberger, The Devil Wears Prada (Anchor Books, 2003), p.24. 以下、本作品からの引用はこの版からとし、本文中にページ番号を( )で表記する。 (2)The Devil Wears Prada (2006, Twentieth Century Fox Film Corporation)DVD: Twentieth Century Fox Home Entertainment Japan, 2007, chapter 2.以下、本作品からの台詞の引用はこのDVDからとし、本文中にチャプター番号を( )で表記する。 参考文献 曽根田憲三『アメリカ文学と映画―原作から映像へ―』(開文社出版,1999) 『キネマ旬報 1471』(キネマ旬報社,2006), pp.61-65 The Devil Wears Prada (2006, Twentieth Century Fox Film Corporation)DVD: Twentieth Century Fox Home Entertainment Japan, 2007.特典映像・メイキング&インタビュー映像集
by mewspap
| 2009-02-21 10:44
| 2008年度卒論
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