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研究ノート⑤ 序論 (Jutice)

 エドガー・アラン・ポー(Edgar・Allan・Poe)の生涯は、愛する者の死であふれている。幼少期に母を亡くすとその後も彼の前からあこがれの人、妻といったふうに愛する人を次々と失っていく。このように、実生活では苦悩と死への恐怖の連続であったが、一方で自らの愛する者の死や病気によって衰弱する姿を目の当たりにすることが、彼の作品の中に色濃く反映されている。また、ポー自身もこういった環境の中で精神不安定になり、かつ過度の飲酒と相まって幻想的な世界が描かれるきっかけになったことは間違いない。
 ポーの描く女性は、何者かによって暴力を受ける。彼女たちが暴力を受けるのは、彼らに恐怖をあたえるからである。その恐怖は、彼らにとって精神的に苦しいものである。彼らはその恐怖を克服し、心の安らぎや暴力的な欲求を満たすために暴力をふるうのだ。しかし、彼らは単に暴力をふるうのではなく、精神が異常ではないのかと感じさせるはど冷酷な人間を表している。ポーは、人間の心の底にある暴力的な欲求を描き、それを彼らの行動で示している。つまり、人間がいかに暴力的な生き物かを彼女たちに復讐する形で見事に表している。
 ポーの作品を語るにおいて死や恐怖は欠かせないテーマである。なぜなら、死の恐怖と戦い、苦闘する姿を描くことが彼にとっての美を表している。彼女たちは、恐怖を与えるだけの在在ではなく、死という形で作品の中に永遠化される。それは、ポーが実生活で得られなかったものである。また、ポーの作品の中で死んだと思われていた女性が再度、姿を現すのは恐怖をあたえるというより、彼女たちへの愛を表現するためである。
 本論文では、第1章で暴力と女性の関係を、第2章で死と女性の関係について主に考察する。
by mewspap | 2008-12-09 09:09 | 2008年度ゼミ


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