目次
序論 第1章 Broken Flowers 第1節 ドン 第2節 旅 第3節 父性 第2章 Stranger Than Paradise 第1節 ウィリーとエヴァ 第2節 祖国 第3節 ラストランド 第3章 Permanent Vacation 第1節 アリー 第2節 放浪 第3節 アリーが出会う人々 結論 注 参考文献 序論 ジム・ジャームッシュ(Jim Jarmusch)は独特のスタイルを持つインディペンデント映画を代表する監督である。彼の作品は登場人物の日常を自然に描いており、決してドラマティックではない。そしてそのほとんどが旅をテーマとしており、淡々とした日常が重なり明日へつながる作品となっている。 本論文ではジャームッシュの3つの作品を対象とし、彼の特徴として挙げられる旅と、それがもたらす変化、そして登場人物の余所者意識を見ていく。題材とする作品は、彼が大学院在学中に卒業制作として制作した『パーマネント・バケーション』(Permanent Vacation, 1980)と、カンヌ国際映画祭でカメラ・ドールを受賞した長編デビュー作『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(Stranger Than Paradise, 1984)、そして彼の最新作である『ブロークン・フラワーズ』(Broken Flowers, 2005)である。初期作品と最新作とでは旅と余所者意識という2つのテーマの比重に変化が見られるので、特にその点に注目したい。 第1章では、Broken Flowersの登場人物が旅をしていくことにより、現在の自分の状況に気付いて行き変化する様子を考察していく。 第2章では、Stranger Than Paradiseの3人の若者の人物像に注目し、その中でもハンガリー移民の青年の余所者意識について考察し、そこから見えてくるジャームッシュ自身のアメリカ観を見ていく。 第3章では、Permanent Vacationを取り上げ、旅と余所者意識の関係を、放浪し続ける青年の人物像から考察する。 結論 本論文ではジャームッシュの3作品を取り上げ、そこに共通するテーマである旅と余所者意識から、登場人物の人物像を考察してきた。そしてそこから、ジャームッシュ本人のアメリカ観についても論じてきた。ジャームッシュ作品で描かれる人々は、どこか社会から浮いてしまっている人間ばかりである。彼の初期2作のPermanent VacationとStranger Than Paradiseでは、アリーとウィリー達の余所者意識に重点が置かれてストーリーが展開しており、旅は主題として前景化してはいない。しかし近年の作品Broken Flowersでは過去に生きるドンが旅を通して現在を見つめ直し、その先に未来を見る姿が描かれている。これまで論じてきた通り、余所者意識と旅という2つのテーマの重点の置かれ方に変化が見られる。過去と現在が日常を作り、その先に未来が見える。しかし、今まで述べてきた3人の登場人物は過去と現在のバランスがとれていない。アリーのように現在だけの永遠の休暇を過ごしてきたジャームッシュ作品の登場人物は、最終的にドンのように過去を生きることとなるのである。 注 (1)Broken Flowers(2005、キネティック)DVD:Broken Flowers(レントラックジャパン、2006)Chapter.3 (2)『シネ・フロント No.344』(シネ・フロント社、2006.4月号)、p.63を参照した。 (3)DVD:Broken Flowers Chapter.2 (4)同上 Chapter.10 (5)同上 Chapter.14 (6)同上 Chapter.10 (7)同上 Chapter.19 (8)Stranger Than Paradise(1984、フランス映画社)DVD:Stranger Than Paradise(キングレコード、2006)Chapter.1 以下、本作品からの台詞の引用はこの版からとし、本文中にチャプター番号を()で明記する。 (9)増村保造「黄土魂のうねりとアメリカ人の自由の原型」、『映画芸術 No.353』(映画芸術社、1986.8月号)、p.66 (10)川本三郎「荒涼としたアメリカの風景を背景にした不思議な喜劇」、『キネマ旬報』(キネマ旬報社、1986.3月上旬号)、p.72 (11)佐藤友紀「発言から浮かび上がるジム・ジャームッシュの本質」、『Jim Jarmusch』(キネマ旬報社、2000)、p.50 (12)川口敦子「好きな連中と一緒に仕事することで僕の望む監督と俳優の共同作業ができると思うんだ」、『Jim Jarmusch』(キネマ旬報社、2000)、p.124 (13)ペンシルヴァニアの鉄鋼業については“Wikipedia”を参照した。 《http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%8B%E3%82%A2%E5%B7%9E%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2》 (14)川本「荒涼としたアメリカの風景を背景にした不思議な喜劇」、p73 (15)ハンガリー動乱については“Wikipedia”を参照した。 《http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%8B%95%E4%B9%B1》 (16)『シネ・フロント No.344』、p.65を参照した。 (17)Permanent Vacation(1982、フランス映画社)DVD:Permanent Vacation(キングレコード、2006)Chapter.1 (18)同上 Chapter.4 (19)同上 Chapter.2 (20)同上 Chapter.3 (21)増村「黄土魂のうねりとアメリカ人の自由の原型」、p.65 (22)川口「好きな連中と一緒に仕事することで僕の望む監督と俳優の共同作業ができると思うんだ」、p.125 (23)同上 p.125 参考文献 『JIM JARMUSCH』(キネマ旬報社 2000) 浅田修一「普通の人たちの映画」、熊沢誠、清眞人、木本喜美子編集『映画マニアの社会学―スクリーンにみる人間と社会―』(明石書店、1997) “Wikipedia” 《http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%B3%E3%82%AF》 “Internet Movie Database” 《http://imdb.com/title/tt0084488/》 《http://imdb.com/title/tt0088184/》 《http://imdb.com/title/tt0412019/》
by mewspap
| 2008-02-23 14:50
| 2007年度卒論
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