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シネマのこつぶ:『フライトプラン』――戦う「母性」

シネマのこつぶ:『フライトプラン』――戦う「母性」_d0016644_8173226.jpg『フライトプラン』Flightplan
2005年アメリカ
監督:ロベルト・シュヴェンケ
出演:ジョディ・フォスター、ピーター・サースガード、ショーン・ビーン、エリカ・クリステンセン、マーリーン・ローストン

日々映画を観ても、なかなか「シネつぶ」議論にもっていく暇がない。
本来、映画紹介を旨としていたので、その原点に還るべく(言い訳)「シネマのつぶやき」以前の「シネマのこつぶ」という枠でメモを記すことにしました。
基本データだけ記して、いずれ「シネつぶ」に「昇格」するかも。

ということで、順序が逆になったけど『フライトプラン』は『インベージョン』と同型の「父不在の戦う母性」映画である。
だいぶ前に観て忘れていたが、『インベージョン』のことを書いて思い出した。

映画は夫、すなわち子どもの父の死から始まる。
ほらね(まただ)。

ジョディ・フォスターは『パニック・ルーム』(@「シネつぶ」アーカイヴその43後編)に続けて「母子話型」にご登場である。よっぽど夫とか父とか「男」とかいう制度が嫌いなのだろう。

ジョディ・フォスター演ずるカイルは旅客機のエンジンを作るエンジニアである。
夫を不慮の事故で突然亡くし、一人娘ジュリア(マーリーン・ローストン)を連れてベルリンからアメリカに帰る。

そして搭乗した機内から、突然ジュリアがいなくなる。

空港のロビーでジュリアを見失ってカイルがパニックになる伏線が描かれるが、「子どもが消える」というのが「母が抱く根元的な恐怖」なのだとこの映画は言う。
ベルリンのアパートを引き払って、階段を下りてくるときに見せた優しさとは異質の、不安感が爆発した母の表情には鬼気迫るものがある。

映画に一貫する図像もコンセプトも「母子」ストーリーも、100%『エイリアン2』であろう。
周りはすべて敵で、「娘」を守るべく般若のごとき表情で戦う「母は強し」映画なのである。

最後に、ヒゲのアラブ系の男がカイルの鞄を取って渡してくれる。
「いい人」だったのである。
でも疑ってたのはカイルでしょう。
この男は、前夜、向かいの家から覗いていたヒゲの男たちに確かに似ている。それが映画的な騙しだとしても、疑ったこと(「確かに見たことがある」と言い立てたこと)に謝罪を負っているのではないかね、カイル母ちゃんは。

「自分の子どもが助かるなら何でもあり」という「母性」映画の思想は、悪しきエイリアンを殺しまくるシガニー・ウィーバーはもちろん、ヤマムラサダコを地獄に放逐するナオミ・ワッツ(『ザ・リング2』@「シネつぶ」)、『フォーガットン』(@「シネつぶ」)のジュリアン・ムーア、そして『インベージョン』のニコール・キッドマンら強い母たちによろしく共有されている。
by mewspap | 2007-11-03 06:16 | シネマのつぶやき


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