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研究メモの効用(Mew's Pap)

Hirokoさん、ようやくいらっしゃいませ。
ラスト・エンペラーじゃなくってラスト・エントリーである(あ、いかんいかん、PRSuserくんの駄洒落伝染病に罹患した)。

さて、研究メモについて。

毎年言うのだけれど、「さて卒論でも書くか」とある日突然机に向かって白紙の原稿用紙(モニターの画面)に向き合い、さらさらと書き進めることのできる人などいない。

卒論は「いきなり始める」ということを決してしてはいけないのである。
それは「始める」のではなく、ある日「始まる」ものである。

そのためには研究メモ、研究ノートの作成が必須である。

日常的に研究ノートを書きつづるという作業をしておくと、蓄積したそれは自分用のデータベースになる。それがいざというときに、あなたを助けてくれるであろう。
未来の自分自身を窮地から救うことのできるのは、今の自分だけである。

そしてこのデータベースに情報が蓄積され、それがある閾値(しきいち)にいたったとき、もはや実際に卒論執筆に「着手しないではいられない」状態を招来するであろう。
そのとき、実際に卒論執筆は「始まる」ものなのである。

この閾値の到来は、研究ノートの情報の量にのみ依存するのではない。
日常的に卒論のテーマへと意識を志向させ、文章化する作業を繰り返していると、「書く」という行為に質的な変化が訪れる。
このとき初めて「書き手」が誕生する。
あなたは「スタイル」を手に入れる。

データベースとスタイルがあれば、400字詰め原稿用紙換算で「たかだか50枚」の卒論を書くことは苦行ではなくなる。

よく「考えてます」とか「まだ書き始めてはいませんが頭のなかにはあります」と言う学生がいる。

ぶっぶー。はい、まちがひ。

書き表され、表現を与えられていない思考は思考とは呼ばない。
How can you know what you want to say until you write it?

考えるだけでなく、それを書き留めることが肝要である。

いやむしろ、考えなくてもいいから書くこと。
何も書くことが思いつかないときは、情報入力という事務作業を通じて書くこと。
作品の出版(公開)年とか、同じ作家(監督)の別の作品とか、レヴューや文献を検索してそのデータやURLとか。
こんなことは大して重要じゃないやとか、これは本丸中の本丸なので失念するわけがないとかいうことこそ、書き留めておかねばならない。
これまた毎年繰り返し言うことだけれども、「明日の私は他人」なのだから。
他者たる「明日の自分」にお手紙を送りましょう。
それが研究ノート・研究メモなんです。

ということで、週に一度は(書いたもの全部でなくてよいから)このブログに研究ノートを投稿すること。

研究ノートの敷居が高いという人はもちろん、みなさん日々これ研究メモを書くことを習慣にしましょう。

メモは何に書いてもよいけれど、散逸したりぐちゃぐちゃになったりするので、「一元化」することが望ましい。

私はKyokutoというメーカーのFacileというメモ帳を愛用している。
Tout est designe par Kyokuto Associates.とあって、La serie de raffinement.というコピーが掲げられた青い表紙のものである(なぜフランス語なのかは知らぬ)。

縦15センチ、横10センチほどの携帯に便利な小型で、表紙には透明のプラスチックカバーが付けられ、裏表紙には厚紙が用いられているので、私のようにぎゅうぎゅう詰めの鞄に放り込んだり、ジーンズのポケットに押し込んだりする過酷なユーザの使用にも耐えられる、実に優れものである(こんなのです↓)。
研究メモの効用(Mew\'s Pap)_d0016644_12342082.jpg
これまでさまざまなノートブックやレポート用紙や裏紙の束などを利用してきたが、これが一番汎用性が高い。

遠距離通勤で車中の人となる時間が長いこともあるけれど、私はカテゴリーにかかわらず「何でも」「どこででも」思いついたときに、「殴り書きの」メモを書く(こんな感じ↓)。
研究メモの効用(Mew\'s Pap)_d0016644_12382141.jpg

何か思いついたときにメモを取ることができないという状態に、私は深い不安を覚える。
別に世界を変革したりノーベル賞を取ったり貧困を根絶したり恒久平和をもたらしたりするようなアイデアではないが、そのとき書き留めておかなかったら永遠に失われてしまう「一期一会」の思考かもしれないではないか。

卒論執筆を控えたみなさんにはとりわけお勧めである。
特に就職活動その他で動き回るときに携帯すると便利です。

各ページの上のマージンにトピックや日付を記入しておくとよい。それからひまなときに手書きでページ番号を付けておくとよい。別に全ページに番号を付けなくとも、奇数ないし偶数番号だけ付ければいい。
最初のページか最後のページは開けておいて、あとでテーマごとにまとめてページ数を列挙する(メモ帳のインデックスになる)。
このメモ群をスクリーニングして、パソコンで正規の研究ノート・ファイルに入力するとよい。

私はもう「研究は引退」を決め込んでいるので、ほんとあれやこれや雑多なメモをこれに詰め込んでいる。
ここ数日のエントリーを見ると、以下のようである。

・千里山駅前の焼酎の種類の多い焼鳥屋
・世界は文学によって構成されている(阪急電車で向かいに座っていた高校生カップルを見て思った)
・JR宝塚駅で電車待ちしているときの感懐
・Levi'sのジーンズとConverseのスニーカー
・Classroom Discussion Activation System(CDAS:シーダスと呼びたい)構想:2回生、3回生の専門科目におけるグループ・ディスカッションでディスカッション・リーダー、サブリーダー、書記、および「サポーター」を設定する
・宝塚の地下食にある蕎麦屋で見聞したタカラジェンヌの言動
・『エイリアンv.s.プレデター』のジェンダー論
・Paul Austerが短文を朗読しているサイトについて
・2回生の授業でショート・レポートをどのように実施するかの案
・4/23日の予定(キャンパスでたーくさんやるべき事があったので行きの電車内で整理しておいた)
・A201教室でコンバータを用いてAV機器にコンピュータを接続するための配線図
・閾値の読み方(↑参照。ずっと「しきち」と勘違いしていた)
・ブログにメモ帳について書くためのメモ(つまりこの文章のネタ)

私はこのメモ帳も表紙にナンバリングしている。
現在17冊目。
先般、16冊目をどっかで紛失してしまった。とっても哀しい。まだ整理・入力前だったのに。無くして思うのが、「あのメモ帳にはこれまでのベストの思考が数多あった」ということである。
文学部の落とし物保管ケースを確認したことはもちろん、阪急、JR、神姫バスの落とし物詰め所に電話し、あるいは出向き、この間に立ち寄った飲み屋でも尋ねてみたが見つからず。

自分でも予想外に落ち込みました。
頭、心、意識、無意識の一部を突然むしり取られたような虚脱感。

なお、上の写真は縮小専用フリーウェアShukusenでリサイズしています。
このソフトに画像をドラッグ&ドロップするだけで、設定したピクセルに縮小できる優れものです。
お勧めですよ。以下のURLですぐに入手できます。
http://www.vector.co.jp/soft/win95/art/se153674.html
by mewspap | 2005-04-30 12:55 | Mew's Pap


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