■シネマ◆
■の■■■ ■つぶ■■ ◆ その45(前) ■■■やき ■ ■ ◆ 2004-12-05 やっほ。 毎年この時期、4回生は卒論のため塗炭の苦しみに身をやつし、七転八倒に輾転反側の日々の「はず」なのであるが、今年度のゼミ生は例年になく「呑気」のように見える。 うむむ、これはちとまずいのではないかとそこはかとなく思う(あくまでも「そこはかとなく」だけど)。 昨年のゼミでワークシート方式を発案し、週に一度フォームに記入して提出を求めるやり方を導入したのだが、今年も(昨年同様)へろへろへろ~と曖昧に消え去っていった。 そこで急に思い付いて(いつものことである)、ゼミの授業以外にメールによる「ほぼ毎日研究日誌」の提出を求めたが、これまたどうもあまり芳しい効果が見受けられない。 そこで急に思い付いて(例によって)、巷間流行のブログによる研究日誌投稿を先般導入した。 わたくしにはよくわからないのであるが、幸いITに知悉したゼミ生がいたのでIT担当に勅命し、管理運営一切を押し付けることにした(A松くん、卒論なんか来年でも再来年でも書けるからブログの方をよろしく頼む)。 ゼミでは研究ノートを作成するよう毎年言っている。 頭でなく身体が考え、文章を書く「習慣」を刷り込むためなのだが、なかなかうまくいかない。 日々これ書くことを習慣にしていると、ある日「頭で考える」以前に「手が勝手に考えてふと気づいたらタイプしている」という境地が訪れるんだけどね。 そうなったら「たかが400字詰め原稿用紙50枚」なんて朝飯前のお茶の子さいさいのピース・オブ・ケーキなんである。 ワークシート方式もメール日誌もブログもそのための仕掛けにすぎない。 新規導入のブログ方式が期待される効果をいかんなく発揮するか、はたまた「忘れられたパイオニア」ワークシート先輩やメール日誌先輩と同じ道を歩んでゴミ箱行きとなるか、今後の行く末を刮目して待つべし(ってもう残すところ一ヶ月しかないんだけれど)。 全員が卒論未提出で落第などという事態に至ったら、アキモトせんせが馘首のうえ「ゴミ箱行き」になるであろう。 ◇━━━━━━━━━━━ 福原愛は「赤ちゃん」である ━━━━━━━━━━━━ 先日、神戸で開催された卓球世界ジュニアで、女子団体決勝が中国に完敗しました。 記者会見で「中国選手に対して苦手意識を持っているのか」と意地悪な質問を受けた福原愛は、らしくない気色ばんだ顔つきで「答えなければなりませんか」と二度繰り返していた。 その「解答の仕方」そのものが雄弁な解答になっていることは言をまたない。 やっぱりこの「若さ」が可愛らしいのである。 朝日新聞の記事(12月2日)では、「中国選手へのトラウマ」を乗り越えられるかとまで書かれていた。 「トラウマ」とはあんまりだと思うけれど、「わたしを構成し、かつわたしがみずからの言葉によって言表し得ない外傷的経験」をトラウマと呼ぶならば、「答えなければなりませんか」と(愛ちゃんなりに)語気を強める姿勢は、まさしく「トラウマ的外傷」を露出させて余りあるものであろう。 だが3日の混合ダブルスでは中国勢を下して溜飲を下げ、女子シングルスでも3位に終わったものの準々決勝で中国を破り、対中国25連敗にストップをかけた。 愛ちゃんがよろしく「トラウマ」を解消されんことを祈る。 この夏のアテネ・オリンピックでも福原愛が注目を集めました。 わたくしは特に卓球に興味はないんだけれど、彼女の試合は見ていて飽きることがない。 なぜなんだろうと考えて、福原愛は「赤ちゃん」なのだとわかった。 今にも泣き出しそうな表情。 決めたときの「さーっ」という声(「よっしゃーっ」から来てるのかね)。赤ん坊の「にゃああぁ」という鳴き声にも聞こえる。 同時に遠慮がちのガッツポーズのごとく握りしめられた左手。頬に手をやって小首をかしげているみたい。 あの図像は明らかに「赤ちゃん」である。 いかなるスポーツも巧緻なくして勝利はないが、巧緻と言うよりもうほとんど「意地の悪さ」というものを要するスポーツなら、卓球とバトミントンに指を屈するであろう。 卓球はあまりのスピードで少々老眼が入ってきたアキモトせんせとしては目が追いつかないのだが、バトミントンの試合を観戦していると、選手たちはほとんど性格上どっか問題があるのではないか、と思えるほどの「意地悪さ」である。 あれは試合と言うより「イジメ合戦」と呼ぶに相応しい。 したがってバトミントンほど試合に負けて悔しいスポーツもないであろう。 そしてたとえ一敗地にまみれたとしても、「イジメ合戦」においては敗者の方がむしろ「人格的には上」であることを証明しているのではないか、なんてこと言ったらもちろん叱られるだろうけど。 とにかく、福原愛の試合は、悪しき大人がその巧緻と奸計と意地悪さを総動員してイジメるのに対し、赤ちゃんが必死に抗しているというイメージなのである。 がんばれ赤ちゃん……じゃなかった愛ちゃん。 ずるい大人に負けちゃだめだよ。 他方、みずからの不明を恥じたうえで言えば、今年は日本のスポーツ選手が意外に(ごめん)「立派な大人」であることを証明した年だった。 ヤクルトの古田敦也選手はもちろん、「脳味噌の主成分が筋肉であろう」と思われていた(ごめん)レスリングや柔道の選手たちが、アテネ・オリンピックで活躍しあるいは敗退したときに見せた姿勢には「大人」の品位が感じられた。 要するにスポーツは「赤ちゃん」と「大人」がすべきものなのである。 ◇◇━━━━━━━━━━━ そろそろ『AERA』ともさよならか ━━━━━━━━━━━━━ 一抹の恥ずかしさを覚えながら告白すれば、わたくしは朝日新聞社発行の雑誌『AERA』のファンである。 ファンであったと言う方が正しいかもしれない。 仕事帰りに車内で読むのにちょうどよい雑誌なんだよね。 満員電車で片手でつり革につかまっていると、新聞は拡げられないし文庫本でもページを繰るのがちょっとしんどい。 軽くてぴらぴらの『AERA』は通勤電車向きなのであった。 発行日の月曜の夕方、帰りの電車で隣の「キャリア・ウーマン風」の女性が同じ表紙の『AERA』を拡げているのがちょっと恥ずかしかったけど。 30代の女性(大卒、均等法世代のキャリア組、多岐にわたる文化表象の消費に旺盛で政治経済にもアンテナを張っている)をメインのターゲットにしている(と思う)この雑誌は、わたくしも共感するところが少なくなかった。 職場のハイラーキーにおける位置づけ(「旧弊な組織メンタリティ」の「上」の世代と「トンデモな言動」を見せる「下」の世代との板挟み)、社会のなかでの立ち位置(団塊と団塊ジュニアの「狭間の世代」)において共有するところ多としたのである。 さらに社会的階梯への新規参入者としての女性に対し、「路地裏からの成り上がり者」としてのわたくしは篤い同志愛を禁じ得なかったのである(「いらん」と言われるかもしれないが)。 かくのごとく「30代女性」の問題関心への親近感を覚えていたのであるが、最近はどうも違和を感じることが多くなった。 決定的だったのは最近の「勝ち犬/負け犬」論争と「韓流」特集である。 この二大潮流は、おそらくわたくしのような「隠れ『AERA』ファン男」を駆逐するに足るものだった。 しかし、編集方針に著しい転換があったということではないのかもしれない。 自然のなせるわざで、わたくしの方が雑誌のターゲットとする区域から外れてきたのであろう。 村上春樹がどこかで「35歳成人説」を唱えていた(ように思う)。 平均寿命が格段に延び、同時に教育サービスを受ける期間が延長された現代では、20歳で成人というのよりも35歳くらいでようやく大人になると考えた方が、社会的によほど妥当であると言うのである。 おそらく『AERA』とは、大人となりつつある人、大人になったばかりであたふたしている人を対象にした雑誌なのである。 どうもわたくしが抱く違和感は、「もうあたふたしてもしかたないや」という諦念のよって来たるところなのかもしれない。 だが、『AERA』とさよならしたら、わたくしは40分に及ぶJRでの帰途をどうやり過ごしたらいいのか。 ただじっと目的駅につくまで何もせずに忍従している乗客を見かけるが、わたくしにはとてもそのようなアクロバットは不可能である。何も読むものなしに電車に乗るなどと考えることもできない。 車内でバッグを覗いて読み物を忘れたことに気づいたときなど、あまりの絶望と虚脱感にこのまま死んでしまうのではないかと思う。 『週刊朝日』とか『週間文春』とか『サンデー毎日』とかの「おやじ雑誌」を買う気にもなれないし。 誰か「ちょっと知的で文化的な、諦観の境地にある40代女性」をターゲットにした新たな雑誌を創刊してくれないだろうか。 毎週買うのに。 ◇◇◇━━━━━━━━━━━ 「天下○品」の「こっさりラーメン」 ━━━━━━━━━━━━━━ 京都を本店とするラーメン店「天下○品」が正門前に開店してもう10年くらいになるだろうか。 この店の売りは2種類のスープがオプションで選べるところにある。 一方はさらさらした「あっさり」スープ、他方は濃い「こってり」(と言うかほとんど「どろどろ」)スープである。 わたくしとしてはその「中間」がいいんだけれど。 別に「黄金の中庸」とか「折衝主義」とか「そんじゃ双方のご意見の真ん中をとって落とし所にしましょう」原理で動いているわけではないが、天下○品のラーメンは「こってり」と「あっさり」の中間がよろしいかと思う(「まったり」と呼びたい)。 ところがそんなものは店のメニューにないのである。 わたくしの寓居のある兵庫県三○市に「天下○品」が開店したとき、かねてよりの願望を成就すべく、同道していた運転手兼秘書兼奥さんと「あっさり」と「こってり」を一品ずつ注文し、スープを半分ずつ「分け分け」して交ぜて、憧れの「まったり」ラーメンを自主作成したものです。 そのうまさに落涙を禁じ得なかったことは言うまでもありません。 以来、そのお店には必ずペアで行って、「あっさり」と「こってり」のスープを「仲良く分け分けして交ぜ交ぜ」して涙を流しながら食べるという奇習を鋭意敢行してまいりました。 よかったね。 ところが、どうやら私どもの奇怪な行動を厨房からスパイしていたのであろう、店長の発案で三○市の「天下○品」には「三○スペシャル」なるものが登場を見たのである。 これがまた私どもの行動を凌駕する奇怪な代物で、「8」の字を描いた横長の特製ラーメン鉢の左右に「あっさり」と「こってり」の両者がそれぞれ別に入っているものなのである。 一杯で二度おいしいという商品コンセプトと容易に推察し得るが、店長は何か誤解されているのではないだろうか。 「二度おいしい」ってのじゃなくて、「あっさり」+「こってり」÷2の「交ぜ交ぜ」が食べたいのっ。 なるほどかねてよりの技法を援用し、8の字型のラーメン鉢で分かたれた左右のスープを半分ずつ「入れ替え戦」することができないわけではないが、特殊なラーメン鉢の形状ゆえにたいへん面倒である。 ある冬の日、確か入試期間中だったと思うが、I坂先生やN島先生と正門前の「天下○品」を訪れたとき、そのおじいちゃん店長に三○店における「三○スペシャル」の存在と、巷間人気が出ること間違いなしとアキモトせんせが太鼓判を押す「交ぜ交ぜスープ」への要望をお伝えしたところ、「それは気がつかなかった」とたいそう感に入った風情で、メニューに加えていただく旨確約を得たのであった。 同席していたI坂せんせやN島せんせは「7:3スープも!」とか「6:4スープなんかどう?」などと茶々を入れ、あまつさえ「いっそのこと客が好き勝手に混合割合を選べるスープを用意せよ!」などと暴言を吐かれていたが、むろんのこと却下である。 「まったり」スープはただしく「5:5」というのがすでに確立されし黄金律なのであり、それが「筋目を通す」ということであろう。 後日、正門前の「天下○品」を再訪すると、メニューには「こっさり」というものが加えられていた。 注文を取りに来たバイトのにいちゃんに、この「こっさり」について「あ、これは……」と言及せんとすると、「これはですね、あっさりとこってりを合わせたスープで云々」と得々と講釈を始めた。みなまで言うな。他でもなくわたくしの発案によるものなのである。 世間知らずのバイトにいちゃんへの教育的配慮から、「これは実のところわたくしが店長に進言してメニューに載せるよう勧奨したものであって云々」と長講釈を始めんとすると、「へーい、こっさり一丁!」と曖昧に笑ってさっさと厨房へと消えていった。 信じてないな。 変な客だと思ってるな。 いいもん。 別にパテント寄こせと申しているのではない。わたくしの望みは「まったり」(「こっさり」などと勝手に名前を付けおって)スープのラーメンが食べたいだけである。ふんだ。 ということでみなさん、正門前の「天下○品」ではおいしい「まったり」ラーメンをご注文されることをお勧めします。 ただし、「こっさり」という世を忍ぶ別名で出ていますのでご注意を。 (以下その45後半に続く)
by mewspap
| 2006-01-07 01:30
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