『チャーリーとチョコレート工場』 監督 ティム・バートン 主演 ジョニー・デップ
とりあえず、私はジョニー・デップをかっこいいとは思わない。気持ち悪い。 まだ見ていない人にはネタばれになってしまうかもしれませんが…(これから見る予定の人は読まないでください!!)素直で家族思いな子供が一番いい思いをし、悪い子はひどいメにあうんだよ。そして生きるうえで一番大事なものはお金でも名声でもなく、あたたかい家族なんだよ。ということを、ブラックユーモアたっぷりに子供にもわかりやすいように作られた道徳的作品だった。「研究ノートに書こう!!」と思いながら見なければ、ティム・バートンが作り出す不気味なおとぎのチョコレート工場の中をイキイキと怪演するコスプレ俳優ジョニデと、びっくりするくらい良い子なチャーリーが作り出すおとぎ話を大人でも十分楽しめると思う。 チョコレート工場に招待された五人の子供のうち、チャーリー以外の子供達は、現在の子供を象徴するような小憎たらしいガキである。私は彼らを見て、キリスト教の七つの大罪を思い出した。「高慢」「大食い」「嫉妬」「怠惰」「怒り」「貪欲」「肉欲」…"Lust"(肉欲)の罪は描かれていなかったが、四人の子供達はそれぞれ大罪をあらわしているように思った。わがままにチャーリーの工場を動き回る彼らはそれぞれ一人づつ、舞台から姿を消していく。ブルーベリーになる子、ゴミ箱に父親ごとつっこむ子、ぺらぺらに薄く伸びてしまう子。最後まで残ったチャーリーに、工場主ウォンカ(ジョニデ)が「工場を全部譲る」と言うが、チャーリーは家族と一緒にいられないならいらない!!とつっぱねる。そこで、チャーリーに家族愛を見せつけられたウォンカもまた、絶縁状態にあった歯医者の父親と和解するのだ。非常に、わかりやすい!! 舞台から消え去った子供達は最後、この子供にしてこの親ありのバカ親と共に工場を後にするのだが、工場でありえないめにあっても、「死んでいない」というところが子供むけファンタジーだった。 昔、推理小説か恐怖小説で「集団で旅にでて、一人づつ減っていく」というものがあった。一人づつへっていく、というものは、次は誰の番なんだろう…と、見る側に次の犠牲者を予測させるところに怖さがある。今回もそういうものだった。次は誰がどんな風に消されるのか?見る側は最初からチャーリーが生き残ることはわかっているので、そんなに怖くはないけれど。 監督が作り出したチョコレート工場の映像は本当に不気味。入り口のメルヘンな人形たちは「ウィリー・ウォンカを讃える歌」を歌いながら、まるで遊園地のような明るさと楽しさを期待させるのに、派手な火薬のせいで人形は燃え、溶け出し、目玉がえぐれるのだ。…怖い。工場で働くウンパ・ルンパという、背が小さく、全員が同じ濃い顔のどこかの島の原住民たちは、ウォンカの命令どおり忠実に働くが、子供達が消えるたびにあらわれ、子供達のダメなところが歌詞になっている歌を歌い踊る。一見楽しそうだが、濃い顔の小さい人間が集団で踊る中、子供が消されていくのもまた、怖い。 最後、チャーリー家族はウォンカの工場の中でお菓子の雪ふる家で、ウォンカも交えながら家族仲良く暮らしている。ラストは「良かった良かった」で終わっているが、チャーリー家族もまた、ウンパルンパや機械と同じ、ロボットのようだとも言える。嘘みたいに仲のいい家族が、チョコレート工場の中で嘘の雪が降る嘘の生活を続けている。それは、家族のいないウォンカが、家族愛ごっこをするためのロボットと一緒なのではないだろうか。歯磨き粉工場をクビになったお父さんが、歯磨き粉工場の機械を直す仕事に就いたっていうのも何だかおかしいし。 ファンタジー映画をいじわるな目で見てしまう自分がイヤです。ウォンカのお父さんが、スターウォーズEp1、Ep2の悪役・シディアス卿だとわかった自分に感激しました。自己満足ですみません。 先の選挙では自民党が大勝しましたが、先生はどう思われますか?
by mewspap
| 2005-09-15 01:24
| 2005年度ゼミ
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