『小説家を見つけたら』基本データ(kaori)

『小説家を見つけたら』(Finding Forrester,2000)
監督:ガス・ヴァン・サント(Gus Van Sant)

主要登場人物
ジャマール・ウォレス(Jamal Wallace):16歳の黒人少年。学業とバスケットボールの腕を見込まれ、私立のエリート高校に転校する。元々本好きで、いつも持ち歩くノートには密かに文章を書き溜めていた。フォレスターの指導により文才を開花する。

ウィリアム・フォレスター(William Forrester):処女作以降作品を出版せず、隠遁生活を送っている幻の小説家。偏屈でこだわりの強い性格。過去に傷を持っており、それが原因で外部との接触を拒んでいる。

ロバート・クロスフォード教授(Prof. Robert Crawford):ジャマールの転校先の学校の教授。プライドが高く、生徒の意見に全く耳を傾けない。

クレア・スペンス(Claire Spence):転校先の同級生。ジャマールと親しくなる。

あらすじ
 ニューヨーク・ブロンクスで生活するジャマールは、ひょんなことから隠遁生活を送っている伝説的な小説家、ウィリアム・フォレスターに、文章の書き方を習うようになる。二人は徐々に打ち解けるが、ジャマールがフォレスターに隠遁生活の理由を尋ねても、はぐらかされていた。ある時ジャマールは、フォレスターの誕生日に、彼をヤンキースタジアムへ連れて行く。そこでフォレスターは自らの過去とそれによる心の傷を明かす。
 転校先の学校では、クロスフォード教授がジャマールの急速な成長に気付くが、嫉妬あるいは偏見からか、本当に彼の力なのかと疑うようになる。ジャマールは教授を見返そうと、フォレスターの文章をアレンジした作品をコンテスト用に提出する。しかし、その文章は雑誌に掲載されていたものだと発覚し、退学の危機に追い込まれる。そのことでジャマールとフォレスターは口論し、仲違いする。
 コンテスト当日、フォレスターが突然現れ、驚く聴衆を前に小文を発表する。そして、クロスフォード教授が称賛したその作品が、実はジャマールの文章だと明かす。疑いが晴れたジャマールは退学せずに済んだだけでなく、文才が知られることとなり様々なオファーがくるようになる。しばらくして、訪ねてきたフォレスターの弁護士によって、故郷スコットランドに旅に出ていた彼の死が知らされ、彼の遺品と手紙を受け取る。

師弟関係を描いた作品に共通する構造
 人物像の共通点
 弟子となる人物は、どの作品にも共通して10代の若者である。自分の現状に不満を持っていて、ここではないどこか・新しい自分を探している。一方、師匠はいわゆる「アウトサイダー」であり、普通の人とは違った部分を持っている。そして、過去に何かを失うなど、心に何かしらの傷を負っている。若者は、師匠の周囲の大人とは違うところに惹かれて憧れ・興味を抱く。師匠もまた、周囲の中で異端性を持っている弟子に対して親しみを持ち、自身の「若き分身」として知識を与え教育する。
 師弟関係の障害物
 ほとんどの作品において、若者の父親は不在であり、師匠は同時に父親役割も担っている。そして、母親は自己中心的な、子供に自分の考えを押し付けるような、良い母親とは言い難いことが多い。子供が、師匠の元へ通うことに反対し、「障害」としての役割を担っているのである。しかし『小説家を見つけたら』の場合は、ジャマールの母親は理解ある母であり、障害とはなっていない。その代わり、フォレスター自身が物語前半でジャマールとの接触を拒否していて、師匠自らが障害となっている。
 社会構造においての関係性
 弟子となる人物は若く、それゆえ当然のことながら社会的に認められておらず、師匠も社会的に排除された存在であることから、両者とも社会構造の周縁に位置している。物語では最終的に、師匠は弟子を社会の内部に送り出し、自身もまた再び内部へと復帰することになる。一見したところ、師弟という上下関係のもと、師匠が弟子に一方的に影響を与え、救っているように見える。しかし、真に救われているのは師匠の方である。過去に傷を持っている師匠こそが、弟子から影響を受け、また、教えるという行為を通して救われることによって、社会復帰を果たすという物語となっている。

『小説家を見つけたら』以外の作品タイトル:『グッドウィルハンティング』『顔のない天使』『アトランティスの心』『サイダー・ハウス・ルール』『ウォルター少年と夏の休日』『キッド』
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by mewspap | 2012-08-14 00:09 | 2012年度ゼミ


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