ユッコ

映画は回想する

目次
序論
第一章 古典的な回想映画
 第一節 古典的な回想をする映画
 第二節 古典的な回想による画面の切り替え方
 第三節 枠物語
第二章 回想映画の多様性
 第一節 多様な回想をする映画
 第二節 多様な回想による画面の切り替え方
 第三節 目のクロースアップ
第三章 特殊な回想
 第一節 回想物語の中の回想
 第二節 一種の回想法
結論

参考文献

序論
 人は何かを契機として、かつて経験したことや過去の出来事を回想する。映画の中でも登場人物が回想をし、過去を語る物語が多く見られる。歴史的な出来事を語るもの、恋人との出会いを振り返るもの、友人との過去を思い返すものなど、様々な回想をする作品が存在する。
 本論文では、回想を中心に物語が構成されている作品を分析することで、人が思い出すという行為に至るにはどのような契機を必要とするのか、観客に登場人物が回想をし、過去を語っているのだと分かりやすく表現するにはどのような手法を用いる必要があるのかを読み取る。時代を分けて見ていくことで、撮影の方法に技術的な違いはあっても、画面繋ぎに用いられる基本的な手法は同様であり、観客が回想の始まりを感じるのは、同じような手法が使われた作品を見てきたことで、無意識のうちに刷り込まれているためであると論じる。
 第一章では、1940年代から1950年代の作品を取り上げ、古典的な回想の方法と、その際に用いられている手法を考察する。
 第二章では、多様な回想をする作品を取り上げ、1940年代から1950年代の作品と撮影方法の技術的な違いはあるが、回想するにあたっての手法に違いはないことを考察する。
 第三章では、人物が回想するという具体的な映像が出てこなくとも、その人物の過去を彷彿させるものを観客に提示することで、過去が読み取れるということを考察する。

結論
 第一章で挙げた映画も、第二章で挙げた映画も、撮影の方法に技術的な違いはあるが、フェードインとフェードアウト、そしてこの二つの手法を同時に組み込んだオーバーラップを主に使うことで過去と現在のシーンとを分け、時間を区別させている。そこへ主人公や過去を知る人物のナレーターズコメントが入ることで、その話が回想物語であると観客に伝わる。
 このことから、回想の技法はパターン化されてきたと言えるであろう。観客はパターン化された回想映画を見てきているため、言わば刷り込みの作用から、フェードイン、フェードアウト、さらにオーバーラップやナレーターズコメントのあるシーンを見ると、無意識のうちに過去へと戻ることを予感するのである。
 第三章で取り挙げた一種の回想法は、写真がすでに過去を意味しているので、観客はそれを見た時点で過去だと理解できるため、上記の手法を使わずとも過去を認識させることができる。


(1)All About Eve(1950, Twentieth Century Fox Film Corporation)DVD:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン株式会社, 2006, chapter 25. 以下、本作品からの台詞の引用はこのDVDからとし、略式記号をAAEとし、本文中に略式記号とチャプター番号を(   )で表記する。
(2)Little Big Man(1971, Paramount Pictures)DVD:パラマウント・ホーム・エンターテイメント・ジャパン, 2004, chapter 20. 
(3)Stand by Me(1986, Columbia Pictures)DVD:ソニー・ピクチャーズ・エンターテイメント, 2002, chapter 1. 以下、本作品からの台詞の引用はこのDVDからとし、略式記号をSBMとし、本文中に略式記号とチャプター番号を(   )で表記する。
(4)Saving Private Ryan(1998, Paramount Pictures)DVD:CICビクター・ビデオ, 2002, chapter 19. 
(5)Moulin Rouge(2001, Twentieth Century Fox Film Corporation)DVD:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン株式会社, 2003, chapter 2. 以下、本作品からの台詞の引用はこのDVDからとし、略式記号をMRとし、本文中に略式記号とチャプター番号を(   )で表記する。
(6)Marnie Hughes-Warrington,History Goes to the Movies(Routledge, 2007), p.64. 以下、本作品からの引用はこの版からとし、本文中にページ番号を( )で表記する。
(7)M. Turim, Flashbacks in Film: Memory and History, New York: Routledge, 1989, p.1, quoted in Hughes-Warrington, p.64.

参考文献
Marnie Hughes-Warrington,History Goes to the Movies(Routledge, 2007).
ダニエル・アリホン著, 岩本憲児・出口丈人訳『映画の文法―実作品にみる撮影と編集の技法―』(紀伊國屋書店, 1980)
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by mewspap | 2010-03-27 15:54 | 2009年度卒論


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